韓国向けSNSマーケティング成功のヒント2024
~韓国人のSNS利用事情からTips&成功事例まで~
日本と韓国の貿易関係は非常に深く外務省のデータによれば、「日本は韓国にとって第5位の貿易相手国」、「韓国は日本にとって第4位の貿易相手国」であり、2023年の両国間の貿易総額は約11兆円に達しています(財務省貿易統計)。
さらに、日本政府観光局(JNTO)のデータによると、2024年4月には韓国からの日本旅行客数が過去同月と比較して過去最高を記録し、日本旅行のインバウンド需要も高まっています。
このような背景から、韓国市場に向けたマーケティング戦略の強化を考える企業が増加しています。その中でも、SNSを活用することが一つの鍵となるでしょう。しかし、韓国のSNS事情は日本とは大きく異なるため、多くの企業が「ハードルが高い」と感じているのも事実です。
本記事では、韓国におけるSNSマーケティングの重要性を探るとともに、最新の韓国人のSNS利用状況や人気のSNSプラットフォームについて詳しく解説します。さらに、成功するための具体的なTipsや事例を通じて、効果的なマーケティング戦略を提案します。韓国市場での成功を目指す皆様にとって、有益な情報をご紹介します!
目次
韓国でのSNS利用統計
韓国は、2009年にFacebookやTwitterが大衆化する以前の1999年から、韓国のSNSサービスである「サイワールド」が広く利用されるなど、早くからインターネット上のコミュニケーションに慣れ親しんだ国の一つです。このため、SNSマーケティングは韓国向けのマーケティング戦略において非常に重要な要素となっています。この段落では、韓国のSNS利用状況をデータに基づいて、韓国向けSNSマーケティングの有効性を明らかにします。
人口に対するSNSの利用率
韓国ではどれほどの人々がSNSを利用しているのでしょうか?Datareportalの2024年1月の調査によると、韓国の総人口に対するSNSユーザーの割合は、2023年初頭と比較して1.5%増加し、93.4%に達しました。この数値は世界平均の62.3%を大きく上回り、世界で3位に位置しています。
日本は総人口に対して78.1%、世界23位であることを考慮すると、韓国のSNS利用率は活発であることが分かります。マーケティングの観点から、韓国の高いSNS利用率は広範囲な顧客層に効率的にアプローチできることを意味します。
韓国の世代別SNS利用状況
世代別のSNS利用率についても注目すべきデータがあります。韓国情報通信政策研究院の2024年5月のレポートによれば、2023年における世代別SNS利用率は以下の通りです。
Z世代が87.2%、ミレニアル世代が90.6%、X世代が65.3%、そしてベビーブーム世代が24.2%でした。特にミレニアル世代やZ世代は主要なユーザー層であり、他国同様にSNSマーケティングの中心となっています。加えて、X世代やベビーブーム世代も一定の利用者がいる点は注目に値します。
韓国の世代別SNS利用時間
韓国のSNS利用時間について見てみると、特にミレニアル世代やZ世代といった若者層の利用時間が長いことが特徴です。韓国情報通信政策研究院の調査によると、週末の平均SNS利用時間は、Z世代が1時間16分、M世代が49分、X世代が36分、ベビーブーム世代が25分です。
未来の消費世代であるミレニアル世代・Z世代をターゲットにする企業やブランドにとって、SNSは潜在顧客との長期的な関係を築くための重要なツールとなっています。
韓国人のSNS利用目的
韓国では、SNSの主要な利用目的が「人脈形成および関係維持」から「エンターテインメントおよび情報収集」へとシフトしています。
DMC Mediaの調査によると、「面白いコンテンツを楽しむため」が87.5%で最も多く、次いで「必要な情報を検索するため(77.7%)」、「趣味関連の情報やコンテンツを得るため(75.8%)」、「時事情報やニュースを迅速に得るため(68.2%)」が上位に並びます。一方で、「知人との交流」は64.8%で、4年間で減少傾向にあります。
このように、ユーザーが情報収集のためにSNSを活用している韓国では、企業にとっても情報発信のメディアとしてSNSを活用することが重要であることを示しています。
世代別で異なる人気SNSプラットフォーム
韓国情報通信政策研究院の「世代別SNS利用プラットフォーム」調査によると、韓国のSNS利用には世代ごとに顕著な違いがみられることが分かりました。
ミレニアル世代やZ世代は、主にInstagramとFacebookを好み、XやTikTokの利用も目立ちます。一方、X世代は比較的多様なSNSプラットフォームをバランスよく活用しており、ベビーブーム世代は、西側諸国ではFacebook一択であるにもかかわらず、韓国では韓国独自のSNSであるNAVER BandやKakao Storyを好む傾向があります。
このように、韓国に向けた効果的なSNSマーケティング戦略を立てるためには、各世代がどのプラットフォームを利用しているのか、そしてその特徴を理解することが不可欠です。
韓国主要のSNSプラットフォーム
YouTube
YouTubeは、韓国人口の約91%に相当する4550万人(2024年2月時点)が利用する動画プラットフォームです。
韓国では「情報収集」を目的としたYouTubeの利用も目立ち、Nasmedia実施した調査の「オンライン上の情報検索チャネルは?」の質問では、韓国の検索エンジンNAVER(88.1%)の次がYouTube(57.4%)と回答しており、どのSNSプラットフォームよりも情報収集元として活用されていることが分かりました。
特に、40代から60代の二人に一人がYouTubeから情報を収集を行っており、特定の年齢層のみがYouTubeで情報を検索していた一昔前とは異なり、現在では幅広い年齢層でYouTubeを通じた情報取集が行われています。韓国のすべての年齢層にとってYoutubeは重要な情報収集源となっています。
韓国のスマートフォンユーザー5,120万人の42%、つまり韓国人口の半分近くが使用しているInstagramは、画像や動画を共有するSNSプラットフォームです。
2024年2月時点で、韓国のInstagramの月間利用者数は2,430万人に達し、動画プラットフォームのYouTubeを除いた調査でFacebook(840万人)、NAVER Band(1,874万人)、X(旧Twitter、649万人)を抑えて、韓国で最も多く使用されているSNSプラットフォームであり、その利用者数は増加し続けています。
Instagramはリアルタイムの情報やトレンド把握に利用されており、観光テーマに関しては「20~30代が旅行先で最も利用(投稿)するSNS媒体1位」とされています。リアルな旅行先の情報源として活用されていることから、旅行前・旅行中のマーケティング媒体として公式アカウントの運用や位置情報をもとにした広告ターゲティングに活用されています。
Facebookは、韓国人口の約16%にあたる840万人(2024年2月時点)が利用するSNSプラットフォームです。
過去5年間で利用者数は約35%減少しており、特に30代以下の若年層の離脱が目立ちます。(年齢層ごとの増減率は20歳未満が-57%、20代が-50%、30代が-36%、40代が-19%、50代が+1%)
しかし、主要な利用年齢層がX世代とベビーブーム世代になったため、これらの世代をターゲットとしたSNSマーケティングにおいて、フェイスブックは依然として活用されています。
X
Xは、韓国人口の約12%にあたる649万人(2024年2月時点)が利用するSNSプラットフォームです。
日本ではXは高い利用率を誇るため、韓国の数字は比較的使用率が低いと感じるかもしれませんが、過去5年で利用者数は2倍に増加しています。現在、若年層を中心に利用されており、実際に韓国のX利用者の割合は10代が9%、20代が27%、30代が21%で、全体の57%がミレニアル・Z世代となっています。
Kakao Story
Kakao Storyは、写真などを共有するSNSプラットフォームで、韓国人口の約9%にあたる459万人が利用しています。
韓国の国民メッセンジャーである「カカオトーク」を提供しているカカオ社がサービスを提供している「Kakao Story」は、2012年3月からサービスを開始し、サービス開始 5ヶ月で国民の半数である2,500万人が加入するなど、10代・20代のユーザーを中心に大きな人気を集めました。
しかし、2015年からFacebookやInstagramが韓国のSNS市場で人気を得るようになり、10代から30代のユーザー離れが目立つようになり、現在では40代から50代の中高年層が主要な利用者となっています。
私的な交流がメインとなり、マーケティングとしての活用は広告出稿が主流です。
NAVER Band
韓国人口の約37%が利用し、X世代とベビーブーム世代の利用が目立つ NAVER Bandは、コミュニティ型のSNSプラットフォームです。
日本では馴染みのないSNSだと思いますが、韓国では「共通の趣味」や「情報共有」ができるオンラインコミュニティとして、X世代とベビーブーム世代に好まれています。ユーザーは趣味や仕事、勉強会、情報共有などのテーマに合わせてコミュニティを立ち上げることができ、投稿やコメントを通じてユーザー同士で情報を交流することができます。
企業での活用はコミュニティの運営よりも、NAVER Band画面上でのディスプレイ広告、ネイティブ広告などの広告出稿が主となっています。
韓国のSNSマーケティング成功のTips&事例
ファンダム(Fandom)を 意識したブランド戦略
韓国では、Fandom(ファンダム)と呼ばれるファンコミュニティが存在します。
K-POP好きの方はご存じかと思いますが、「Fandom」とは、愛好家を意味する「Fan」と領域・支配を意味する「Dom」が結びついた造語で、熱狂的なファンコミュニティを指しています。ファンダムには、コミュニティだけでなくファンが参加する活動なども含まれており、韓国企業はさまざまな方法で消費者と信頼関係を構築し、ファンに楽しんでもらいながら、認知や好感度を高める「ファンダムマーケティング」に注力しています。
韓国の人気飲料「バナナ味牛乳」を製造する乳製品特化食品企業である「ビングレ」の公式Instagramは、この点をうまく活用しています。
ビングレは1967年に創業し上場している中堅企業で、従来のInstagramはウェブパンフレットの役割を果たしていました(写真の左側)。しかし現在では、「これは食品会社のInstagramなのか?」と思うほどキャラクターの写真が目を引きます。このキャラクターは「ビングレ王国」の後継者というコンセプトでフォロワーとのコミュニケーションを取るためのブランドキャラクターです。
<https://www.instagram.com/binggraekorea/?hl=ja>
ビングレは主要ターゲット層をミレニアル世代・Z世代に設定し、ファンダム(Fandom)によって独自のコミュニティ文化を生み出すという点に着目して、ブランドイメージにマッチしたキャラクターを開発し、自社製品を世界観に登場させて興味深いストーリーを展開しながら、キャラクターを通じてユーザーと交流を行いました。
この結果、該当キャラクターを中心にファン層が形成され、公式アカウントが20万人以上のフォロワーを持つこととなり、潜在的なターゲット消費者が自社製品を自然に認知できる機会を提供するなど、韓国SNSマーケティングの成功事例として挙げられています。
ユーザーに有益な情報を提供する
「有益な情報を提供すること」は、SNSマーケティング施策では基本中の基本ですが、韓国では多くのユーザーが情報収集のためにSNSを利用しています。そのため、ユーザーにとって価値があり、魅力的な情報を提供することは、韓国SNSマーケティングにおいて重要なポイントとなります。
とはいえ、SNSマーケティングは長期戦です。ターゲットユーザーにしっかりと焦点を当て、より良いコンテンツを提供しましょう。
フードロス問題を解決するための農産物定期配送サービスを提供している「アグリアス」は、Instagramの公式アカウントで消費者に有益な情報を多く発信しています。
アグリアスの公式Instagramの投稿では、野菜の品種紹介、良い野菜の選び方、農家からの納入過程など、専門知識で消費者の役に立つような情報を、ハッシュタグ戦略を活用しながら投稿を行っており、Instagramアカウント上でプロモーション情報を見つけることは困難です。
ユーザーのコメントには「そんな野菜は初めて知った」「購入したい」といった反応が見られます。
自社のサービスに関心を持つ可能性のあるユーザーに情報を提供することで、潜在顧客を引きつけると同時に、顧客との絆を形成し、サービス提供につなげる好例と言えるでしょう。
プラットフォームの特徴を理解して、積極的にコミュニケーション!
SNSは企業と顧客が双方向にコミュニケーションが取れる優れたツールです。特に韓国では、Xが自分の趣味や嗜好に合った人と交流するプラットフォームとして利用される傾向が強くあります。
企業がマーケティング目的でSNSを効果的に活用するには、単なる情報発信ツールではなく、商品やブランドに関心のある人が「共通の関心事項」について、積極的に話し合える空間を提供し続けることを目指しましょう。
X上で、22万人以上のフォロワーを持つ韓国の化粧品ブランド「オリーブヤング」の公式アカウントは、ユーザーとの双方向コミュニケーションが上手いと韓国では有名な企業です。
다들 눈치가 제법인걸,,후후👀
올갱이들에게 📐각잡고 정식으로 소개할게😆
올리브영의 NEW MODEL😎
💖 카이 & 화사 💖멋지고 귀엽고 다 하는 우리 모델들
얼른 영상으로 확인해줘!!
덕분에 담당자 기부니도 화사하다카이✨너두 조아? 그럼 맘찍❤
너무 기대 된다궁?! 그럼 RT😉 pic.twitter.com/OHInJe5zTh— 올리브영 (@oliveyoung) September 15, 2022
オリーブヤングは、自社ブランドや製品が言及されたツイートを積極的にモニタリングし、迅速にリツイートやコメントを行うことで、ブランドがユーザーの意見を受け入れ、コミュニケーションを図っている姿勢を示しています。
このような双方向コミュニケーションは、ユーザーを通じて二次、三次拡散を引き起こし、自社ブランドの言及がXのトレンドに入るなどの話題を呼ぶこともあります。
インフルエンサーと協業する
韓国の若年層向け経済メディアであるアプティの調査によると、ミレニアル世代・Z世代の 10人中 7人がインフルエンサーの推薦する製品を購入するほど、韓国ではインフルエンサーが消費生活に大きな影響を与えています。
韓国のコスメブランド「ドクターG」は、自社のターゲット顧客に人気のあるインフルエンサーとの協業を通じて、魅力的な製品プロモーションを行いました。
ドクターGは、10代をターゲットにした若々しいイメージを追求するブランドです。そのため、10代が共感できるトレンドや彼らの文化をシチュエーションコメディのショートフォームで投稿している45万人以上のフォロワーを持つ「빵먹다살찐떡(パンモッタサルチントク)」と協業しました。
リールを通じて商品のメリットや最新キャンペーン情報をファンに伝えることで、1万件の「いいね」と40万回の再生という好反応を引き出し、製品をプロモーションを成功させました。
また、単なる製品プロモーションにとどまらず、インフルエンサーのコンテンツを見たファンの反応を製品開発や販売企画に成功裏に結びつけた例もあります。
韓国の食品製造ブランドCJ第一製糖は、人気ウェブトゥーン作家であり登録者数250万人以上のYouTuber「침착맨(チムチャクメン)」との協業で、新製品カップご飯のプロモーションのためにYouTubeライブ放送を行いました。
普段から率直でユーモラスなレビューが特徴のチムチャクメンは、ライブ中に「製品名が発音しにくい。責任者を問いただすべきだ!」と指摘し、放送中に新しい名前を提案しました。彼の創造的でユーモラスなネーミングがファンの大きな笑いを誘い、1000件以上のコメントとともに各種SNSやコミュニティで口コミが広がるバイラル効果により、瞬く間に話題となりました。
ファンの反応を緻密にモニタリングしたCJ第一製糖は、放送3ヶ月後に実際に製品名を変更して新製品を発売すると同時に、再びチムチャクメンとライブを行い、放送時間内に購入者に彼のグッズをプレゼントするイベントを実施。このイベントは開始4分で準備した数量がすべて完売するという成果を収めました。
BtoB企業も楽しさを加えたコンテンツを企画する
SNSマーケティングというとBtoCをイメージする方も多いのではないでしょうか?
近年、BtoB企業であってもビジネス上の情報をSNSから取得する傾向が強まっており、BtoB企業であっても多くの企業がSNSマーケティングに取り組んでいます。
韓国人がSNSを利用する理由の1位は「面白いコンテンツを楽しむため」です。しかし、比較的面白さと親和性が低いと考えられるBtoB企業であっても、コンテンツの企画力によって、ユーザーニーズを満たしながら自社製品の認知拡大を目指すことが可能です。
韓国の電機メーカーである「サムスンSDI」の公式YouTubeチャンネルでは、誰でも楽しめるようなエンタメ性の高いコンテンツに自社の製品に関する特徴や情報を含める動画を制作・公開しています。
サムスンSDIの主力製品は電気バッテリーですが、「バッテリー実験室」というコンセプトで「おもちゃのRCカーに高出力バッテリーを装着してみた」「万歩計に電気自動車バッテリーを接続したら?」「マレーシア人に韓国人と働くのはどうかと尋ねてみた」など、まるで一般Youtuberが企画するコンテンツかのように、ユーザーの興味関心を引き付ける動画を制作しています。
実際に動画を見てみると、TV番組並みのハイクオリティの動画の中に、自然な形で製品の特徴が伝わるよう工夫がなされています。このような動画は、時には30万以上の視聴回数を記録するなど人気を集めており、チャンネル登録者は10万人を超えています。また、社員の仕事をVlog形式で投稿し、企業文化を伝えるウェブメディアとしてもYoutubeを活用しています。
さいごに
韓国は早くからSNSが普及し、世界でも有数のSNS利用率を誇る国です。韓国向けにSNSマーケティングに注力することは企業やブランドにとって潜在顧客との信頼関係を築き、認知度を高める重要な鍵となります。
自社のターゲット層に合ったSNSを選定し、魅力的なコンテンツを提供し、インフルエンサーとの協業や双方向のコミュニケーションを図るなど、効果的に運用することでビジネスを大きく発展させるきっかけを作ることが可能です。
以下URLでは韓国に向けたデジタルマーケティングの最新情報をご覧いただけるホワイトペーパーをご用意しています。SNSを活用した効果的な韓国向けSNSマーケティングをご検討でしたら、ぜひお気軽にご相談ください。
ヨンス チェ マーケティング部
大学では日本語の通訳・翻訳を専攻し、韓国から日本への移住を決意。 「日本と世界をデジタルで繋ぐ」マーケターとして活躍したいとを思い、インフォキュービック・ジャパンへ入社。 淡水エビ・タランチュラ・大型オウム・希少クワガタなどの飼育・繁殖経験もあるほど生き物が大好きです。現在、ヤモリを飼育して10年以上、ヤモリ愛に溢れた韓国人です。