世界の検索エンジン 28選
~2025年に注目すべき世界のプラットフォーム一覧~
デジタル業界ではAIの進化が加速していますが、「検索エンジン」は今なお、ユーザーの購買行動に深く影響を与える強力なチャネルです。
海外市場に向けたデジタル施策を成功させるためには、各国・地域で主流となっている検索エンジンを把握し、最適に活用することが第一歩です。世界的に高いシェアを誇る「Google」や「Bing」はもちろん、特定の国や文化に根ざした独自エンジンの存在も見逃せません。
本記事では、2025年現在、世界で注目される検索エンジンの最新動向をご紹介します。世界で利用されている検索エンジンや、プライバシー重視型、地域特化型など、日本ではあまり知られていない「海外検索エンジンの今」に迫ります。
目 次
2025年 世界で人気の検索エンジンTOP6
2025年4月の世界の検索エンジンシェアは、以下の割合です。
ランキング | 検索エンジン | シェア |
---|---|---|
1位 | 89.66% | |
2位 | bing | 3.88% |
3位 | Yandex | 2.53% |
4位 | Yahoo! | 1.32% |
5位 | DuckDuckGo | 0.84% |
6位 | Baidu | 0.72% |
<参考データ:Statcounter_Search Engine Market Share Worldwide – April 2025>
モバイル、PC、タブレットを含む全てのデバイスを含めたデータです。
――データの読み解きインサイト
2024年と比較してもそれほど大きな変動はありませんでした。Googleのシェア89%は、グローバル広告配信においてGoogleが基本戦略の中心と考えて良いでしょう。ただし、地域や戦略に応じてBing、Yandex、Naverなどを補完的に組み合わせる必要がありそうです。近年人気の高まるDuckDuckGoやStartpageのようなプライバシー重視型の検索エンジンも、今後のクッキーレス時代の選択肢として活用することも検討しても良いのではないでしょうか。
では、各検索エンジンの特徴について詳しくみていきます!
1位:Google(アメリカ)
Googleとは世界で最も利用されている検索エンジンであり、現代のデジタルマーケティングにおける起点といえるプラットフォームです。
1998年にアメリカで設立されたGoogleは、インターネット上のあらゆる情報を素早く・正確に届ける技術は、ユーザーの検索意図を読み取り、関連性の高い情報を表示するアルゴリズムの進化により、広告やSEO、AIO(AI最適化)などのマーケティング施策において最重要チャネルとして中心的な役割を担っています。
Googleは世界中のオンライン検索リクエストの70%以上を処理しており、検索エンジン市場を独占してきました。2025年4月時点で世界でシェア率の 89.66% (地域によって大きな変動あり)を占め、アメリカ、ヨーロッパ、日本などでは圧倒的な利用率を獲得しています。
一方で、「中国・韓国・ロシア」など、政府規制や独自文化の影響が強い地域では、その国独自の検索エンジンが主流となっており、「世界どこでもGoogle一強」というわけではありません。グローバル戦略においては、その使い分けが求められます。
Google広告の特徴
特 徴 | |
コスト | Google広告は競合が多いためCPC(クリック単価)が高騰しやすい傾向がありますが、精度の高いターゲティングとAI最適化により、高い費用対効果が期待できる |
配信先 | 世界中の検索エンジンシェアの約9割を占め、200以上の国と地域で広告配信が可能。スマートフォンユーザーや音声検索ユーザーも含め、あらゆる検索行動に対応可能 |
配信国 | ほぼ全世界を網羅しているが、中国本土など一部の国ではGoogle広告の利用が制限・禁止されている |
2位:Bing (アメリカ)
世界シェア2位である Bing は、Microsoft社が開発・運用する検索エンジンで、Windows PCやMicrosft Edgeなどにデフォルト搭載されていることから、PCユーザーを中心にシェアを獲得してきました。
検索エンジンのシェアは3.38%ではありますが、近年は、ChatGPTとの連携を活かした生成AI検索機能(Copilot検索)でも注目を集めるなど、AI分野でも先進的な動きを見せています。
Bingは、北米、ヨーロッパなどの一部の地域で安定したユーザーを基盤に持ち、PCにデフォルト搭載されていることからBtoB領域や企業ユーザーとの相性が高いと言われています。Google広告に比べて広告単価がい傾向で、費用対効果を求める企業にとって魅力的な広告媒体です。
近年は、同じMicrosoft であるLinkedInと連携して、職種・業種・企業規模などのビジネス特化のターゲティングができるようになりました。また、Googleが利用できない中国において、中国本土でも利用可能な数少ない海外検索エンジンとして存在感を増しています。
Bing広告(Microsoft Advertising)の特徴
特 徴 | |
コスト | Google広告と比べて競合が少なく、CPC(クリック単価)が安い傾向。費用対効果を高めやすい。低コスト・高ROI |
配信先 | Microsoft製品との連携が可能。Windows、Edge、Outlookなどの利用者に自然にリーチができる |
配信国 | 一部制限はあるものの、Googleが配信できない国への広告出稿も可能(例:中国本土や一部アジア地域)。中国では30%前後のシェアを獲得 |
3位:Yandex(ロシア)
Yandexは、ロシア発の検索エンジンです。創業の経緯は興味深く、1993年から1996年にかけて、聖書を検索するための技術開発がきっかけとなって誕生した検索エンジンです。もともとはロシアのみで利用可能でしたが、現在はグローバル英語版を利用することができるようになりました。YandexもGoogleと同様に、検索エンジン以外にも無料メールや地図、ストレージ、電子取引など多岐にわたるサービスを提供しておりロシア最大級のテクノロジー企業です。
Yandexは「ローカルSEO」と「地域性」を重要視する検索結果を表示する傾向があり、Googleとは異なるアルゴリズムを採用しています。ユーザーの検索履歴を最小限に抑え、匿名化するなど優れたプライバシーシステムを提供しており、ユーザーのプライバシー保護に配慮した取り組みは、世界的に高い評価を受けています。
2023年4月時点のグローバルシェアは1.43% 程度でしたが、2025年には2.53%と堅実にシェアを伸ばしてきています。また、ロシアの近辺諸国において、Yandexの利用率は非常に高く、ロシアは 75%以上のシェアを獲得するなど圧倒的な人気を誇っています。特に、中央アジア、中東地域など旧ソ連圏において浸透しています。
2025年 Yandexの国別シェア
国 | 国別シェア |
---|---|
ロシア | 75.22 % |
トルコ | 38.58 % |
ベラルーシ | 36.37 % |
カザフスタン | 31.84 % |
タジキスタン | 29.53 % |
ウズベキスタン | 23.84 % |
アゼルバイジャン | 13.45 % |
<引用:Statcounter_Search engine market share 2025 Apr>
Yandexはベラルーシ語、カザフ語、ウズベク語、トルコ語、インドネシア語など多言語に対応しており、各国の言語環境にローカライズされた検索体験を提供している点もシェア拡大の一因といえるでしょう。
4位:Yahoo!(アメリカ)
Yahoo!はアメリカ発祥の検索エンジンであり、世界シェアは 1.33 % ほどを占めています。日本では現在でもシェア率は9.17 %と、Googleに次いで2番目に多く利用されています。
「Yahoo.com」はご存じの通り、Yahoo! 独自のUIで提供されており、ニュース、金融、時事情報などポータル機能が評価されており、特定層に根強い人気があります。
現在、Yahoo!グローバル版の検索エンジンのベースは、Microsoft Bingの検索技術を採用しています。これは2010年に締結された「Yahoo–Microsoft Search Alliance」に基づき、検索結果や広告配信もMicrosoft Advertising(旧Bing Ads)経由で出稿されます。そのため、LINEヤフーが運営する日本のYahoo! Japan(Googleベース)とは全く”別物”と考えておきましょう。
Yahoo!広告の特徴
特 徴 | |
---|---|
コスト | Google広告と比べて競合が少なく、CPC(クリック単価)が安い傾向。費用対効果を高めやすい。ROI(費用対効果)重視の広告主に向いている |
配信先 | Microsoft Advertisingを通じてYahoo.comの検索結果ページに広告掲載。検索連動型広告やディスプレイ広告(Audience Network)に対応 |
配信国 | 一部制限はあるものの、Google広告と同等の国際配信が可能。特に北米・カナダが利用者数が多く、フィリピンなどにも◎ |
5位:DuckDuckGo(アメリカ)
アメリカで開発された「DuckDuckGo」の最大の特徴は、利用者のプライバシー保護に特化した検索エンジンであるということです。
GoogleやBing、Yahoo! といった、ほとんどの主要検索エンジンは利用者の検索履歴などが自動的に情報収集される仕組みになっていますが、DuckDuckGoは、個人情報を一切収集、保存せず、ユーザーのプロファイリングを行わないため、プライバシーに重点を置く若者から高い支持を集めています。
グローバルシェアとしての知名度は低いものの、米国ではモバイル検索市場シェアは、Yahoo!やBingを抜いて2位を獲得しており、世界中に一億人以上のユーザーが存在します。プライバシー志向の高いユーザー層や、Googleを利用していない層への独自リーチが可能です。
DuckDuckGo広告の特徴
特 徴 | |
---|---|
コスト | 競合が比較的少なく、CPCが安定しやすい。広告掲載量が少なく広告が目立ちやすい傾向 |
配信先 | Microsoft Advertising Networkを利用しているため、DuckDuckGoだけでなく、Bing、Yahoo!、AOL、Ecosiaにも平行配信が可能 |
注意点 | Microsoft Advertisingアカウントが必要 |
6位:Baidu(中国)
中国独自の検索エンジンであるBaiduは、世界全体ではシェアは0.72%とされているものの、中国国内では、53% のシェアを獲得しており、長年中国市場では不動の人気を獲得している検索エンジンです。
世界的にも知名度が高まっている検索エンジンで、月間ユーザーは8億人以上と言われています。
Baiduの大きな特徴は、入力されたキーワードに関連する情報を幅広く提供し、「購入・決済ページ」へスムーズに誘導する構造にあります。中国語の検索には特に精度が高く、中国市場に関してBaiduでないと得られない情報も多くあり、中国国民が利用する検索エンジンです。
Baidu広告の特徴
特 徴 | |
---|---|
コスト | 広告出稿費用とは別にデポジット(保証金)が別途必要。CPCは業種にもよるが、競合が多い業界は高額になりやすいため想像以上の金額が必要になる場合も。要相談 |
配信先 | Baiduの検索結果、ニュース、ブログ、動画、提携メディア、Baidu Map、Baidu Tieba、Baidu Zhidaoなど幅広い広告配信が可能 |
配信国 | 中国国外のユーザーには基本的にリーチ不可。香港やマカオなど一部中華圏エリアには、制限付きでリーチ可能な場合もある |
注意点 | 外国企業の出稿には中国現地代理店を通じた申請・審査が必要。広告表現に関して中国政府の厳格な規制(内容チェック・検閲)があるため、広告出稿は専門家に相談することをお勧めします |
注目すべき「プライバシー重視」の検索エンジン 7選
GDPR(EU一般データ保護規則)やCCPA(カリフォルニア消費者プライバシー法)などのデータ保護法の強化により、個人情報の扱いに関心が高まるなか、大きくシェアを伸ばしてきているのが、「プライバシーを重視した検索エンジン」です。特にGDPRなどの規制強化の影響を受けるヨーロッパでは、プライバシーを重視した検索エンジンの人気が顕著に高まってきています。
検索履歴を保存しない、個人情報を収集しない、トラッキングを行わないなど、ユーザーのプライバシー保護に配慮した世界の検索エンジンをご紹介します。
1.Ecosia(ドイツ)
Ecosiaはドイツで創業されたユニークな検索エンジンです。
Ecosiaでの検索は、検索履歴に基づたユーザー個人のプロファイルを作成することもなく、すべての検索履歴を 一週間以内に匿名化します。広告主にユーザーの個人データを販売も行っておらず「透明性が高さ」が評価されています。
さらに、Ecosiaで行われる検索行動の約45回に一本の木が植樹される仕組みで、収益の80%以上を「植樹などの環境保護活動」に寄付し、現在までにEcosiaコミュニティによって植えられた木は1億7000万本以上に達しています。
「検索エンジン×エコ」が連携した画期的な仕組みにより、ヨーロッパを中心に理念に共感した若者の利用者が増加しています。持続可能性を重視した、プライベートな検索体験を求めるユーザーには最適な選択肢と言えるでしょう。
2.Qwant(フランス)
Qwantは、フランス・パリに拠点を置く検索エンジンサービスです。
「プライバシー保護」と「中立性」を重視し、ユーザーデータの収集や追跡技術の使用を一切行わないことをポリシーとしています。加えて、ユーザーデータの販売も行っていません。
Qwantの検索結果は、政治、経済、社会基準に基づく偏見などを反映しておらず、情報の中立性と公平性を保証しています。さらに、Googleアルゴリズムが推奨するような検索結果とは大きく異なり、多様な意見を含む複雑な世界の現実を反映しています。近年、6歳~13歳までの子供向けQwant Juniorを開発しており、子供には不適切な検索結果や商用広告は表示されない仕組みを構築しています。
フランス政府はQuantの利用を推進しており、現在ヨーロッパ市場を中心に成長しています。日本での利用は現状できませんが、将来的には日本市場への展開も検討されているようです。シンガポールなど一部地域からはアクセスできません。
―― QwantとEcosia、欧州独自の検索インフラ構築へ
環境配慮型の検索エンジン「Ecosia」と、フランス発のプライバシー重視型検索エンジン「Qwant」は、欧州のデジタル主権確立とAI時代の基盤構築を目的に、2024年に共同で新会社「European Search Perspective(EUSP)」を設立しました。
これまで両社はGoogleやMicrosoft Bingの検索インフラを活用していましたが、2025年からは独自開発の検索インデックスを導入し、まずはフランス語・ドイツ語圏を対象とした検索結果の提供を開始予定です。
3.Startpage.com(オランダ)
オランダに拠点を置く Startpage.com は、ユーザーの検索結果を追跡しない「The world’s most private search engine(世界で最もプライベートに配慮した検索エンジン)」をキャッチフレーズに、個人情報の追跡を行わない検索体験を提供し、プライバシー重視のユーザーから支持を集めています。
Startpage.comの検索エンジンでは、Googleの検索結果を利用しながらも、Start Pageがプロキシとして機能する点です。これにより、全てのトラッカーとログが削除されるため、検索語句やアクセス情報はGoogle側に一切渡らず、ユーザーの検索履歴は完全に保護されるという仕組みです。
もちろん Startpage 内でも個人情報が収集されることはなく、個人情報の開示やデータの販売なども行われておらず、「世界で最もプライベートな検索エンジン」と呼ばれる理由です。
StartMailというプライバシー保護電子メールサービスも提供しており、徐々にサービス領域を拡大しています。日本語を含む50以上の言語に対応しており、2023年の月間アクティブユーザーは3000万人ほどと言われています。
4.Fireball(ドイツ)
ドイツ・ベルリン発のFireballは、ドイツ語と英語に対応した検索エンジンです。
1996年に誕生し、当初はドイツ国内で高い人気を誇っていましたが、Googleの台頭とともにシェアを落としました。
その後、2000年にLycos Europeに買収され、さらに2022年2月には英国のCentralNic Group Plc(AIM:CNIC)により買収されるなど、幾度もの経営転換を経ています。2016年には独立系企業として再スタートを切り、現在もサービスは継続されており、検索結果はBingに基づいて提供されています。
Fireballは検索履歴を保存せず、個人情報の収集や販売も行わない設計で、プライバシー保護を重視しています。また、検索アルゴリズムの公開や、偏りのない検索結果の提供など、透明性と公平性にも注力しています。
5.WEB.DE(ドイツ)
WEB.DEは1995年にサービスを開始した、ドイツ語検索に強みを持つポータル型検索エンジンです。ニュース、天気、スポーツ、エンタメなど幅広い情報をカバーしており、ドイツ国内で高い人気を誇っています。
同社は検索機能だけでなく、フリーメールやクラウドサービス、ニュースアプリなど多様なサービスを展開。メールやクラウドは60カ国以上で利用されており、国を越えて高い認知度を持っています。近年ではモバイルアプリも登場し、スマートフォンからの検索やニュース閲覧、動画視聴など、モバイル対応にも積極的です。
また、WEB.DEは検索履歴の保存期間の明示や、個人データの第三者提供を行わない方針など、プライバシー保護を重視した運営を行っています。メールやクラウドコンテンツにおいては、エンドツーエンドの暗号化技術を導入するなど、データセキュリティにも注力しています。
6.Search Encrypt(アメリカ)
Search Encryptは、2016年に誕生したプライバシー保護に特化した検索エンジンです。
ユーザーの検索語句や検索履歴をローカルで暗号化し、SSL経由で送信することで、第三者による追跡や情報の蓄積を防ぎます。
検索語句はサーバーに送られる前に端末上で暗号化され、サーバー側では検索履歴を保存せず、検索行動の痕跡が残らない設計です。さらに、暗号キーの有効期限が切れると、閲覧履歴も自動的に消去される仕組みが採用されており、検索内容の機密性が高く保たれます。
インターフェイスは従来の検索エンジンと変わらずシンプルで使いやすく、Google ChromeやMozilla Firefoxの拡張機能としても利用可能です。なお、一部地域ではアクセスに制限がかかっている場合があります。
7.Qmamu(インド)
Qmamu(クマム)は、2021年にインド初の国産検索エンジンで、インド市場に特化した情報提供を目的として誕生しました。検索以外にも、 画像、動画、ニュース、ショッピングなど、包括的な情報プラットフォームとして進化を続けています。
Qmamuの大きな特徴の一つは、ユーザープライバシーを最優先している点です。個人情報やその他のデータを収集、保存することなく、検索履歴をプライベートに保ち、同時に外部からの不正アクセスに対するセキュリティ対策も講じられています。
検索アルゴリズムはインドのローカル情報を重視しており、インドに関連するウェブサイトやコンテンツを優先的に表示します。シンプルなインターフェイスと広告表示の少なさもユーザーからも好評を得ており、急速に認知を獲得しています。
Q. 世界で支持されている、プライバシー保護を重視した検索エンジンは? |
近年、プライバシー保護への関心が高まる中で、個人情報を追跡せず、安全に検索できる検索エンジンが世界各地で注目を集めています。代表的な例としては、以下のような検索エンジンがあります。 |
検索エンジン | 特 徴 |
---|---|
Ecosia(ドイツ) | 検索収益を植林活動に還元する、環境貢献型のプライバシー保護エンジン |
Qwant(フランス) | EU発、検索履歴を保存しない設計で、政府・教育機関にも採用 |
Startpage(オランダ) | Google検索の結果を匿名で表示する、プライバシー最重視型 |
Fireball(ドイツ) | ドイツ語圏に強く、Bingベースで履歴を保存しない仕様 |
WEB.DE(ドイツ) | ポータル型サイトとして人気で、検索・メール・クラウドで高いデータ保護体制 |
Search Encrypt(アメリカ) | 検索語句をローカルで暗号化し、SSL通信で送信 |
Qmamu(インド) | インド国内に特化し、ローカル情報とプライバシー保護を両立した国産検索エンジン |
各国で独自に発達した海外の検索エンジン15選
世界には、Google一強とは異なる検索エンジン市場が存在します。
言語、法規制、文化的背景などを反映し、各国で独自に発展してきた検索エンジンには、その国ならではの強みがあります。ここでは、世界の地域特化型・テーマ特化型の検索エンジンを取り上げ、それぞれの特長を解説します。
1.Ask.com(アメリカ)
アメリカで開発された検索エンジンで、かつては「Ask Jeeves(アスク・ジーブス)」の名でも知られていました。2010年に検索エンジンの新規機能の開発は終了しましたが、現在でも検索エンジン機能は維持されており、主にアメリカ国民を中心に利用されています。
Ask.comでは、検索機能に加えて Q&A形式の情報を提供するポータルサイトとしての側面も持ち、日本語を始めとした多言語対応によって、グローバルにおいても一定の需要を獲得しています。
2.Wolfram Alpha(イギリス)
Wolfram Alpha(ウルフラム・アルファ)は、イギリスの論理物理学者によって作成された知識・計算・情報に特化した検索エンジンです。
一般的な検索エンジンは入力したキーワードに関連した検索結果が表示するのに対し、ウルフラム・アルファは入力された質問に対して「回答」を直接導き出すというユニークな仕組みを持っています。特に数学・物理・統計・化学などの分野に強く、検索というより「計算知識エンジン」としての性格が色濃いのが特徴です。
2018年からは日本語版、2022年からはスペイン語版を利用可能です。
入力は自然言語や数式の両方に対応しており、通常の検索エンジンでは難しい高度な計算式や専門的な数値分析にも対応可能です。2018年には日本語インターフェース、2022年にはスペイン語対応も追加され、より多くのユーザーに利用されるようになっています。さらに2023年3月からは、ChatGPTとの連携も開始。ChatGPT Plusユーザーは、Wolframプラグインを導入することで、対話型AIの中でWolfram Alphaの高度な数理処理機能をそのまま利用することができます。
計算式を検索入力してみると、図式が表示されました。>
3.AOL.(アメリカ)
AOL(エーオーエル)は、元々America Onlineという名称で1985年に設立された、アメリカを代表するインターネットサービス企業です。
当初はAppleのMacintosh向けオンラインサービスとしてスタートし、1993年にはMicrosoftなどにも提供を拡大。2000年代初頭には急成長を遂げ、一時はGoogleに匹敵する存在になるとも言われました。2006年に社名を正式にAOLへと変更しています。
現在のAOLは、検索エンジンとしての機能に加え、米国最大級のインターネットアクセスサブスクリプションサービスを展開。電子メール、AIM(AOL Instant Messenger)、AOL Video、動画検索、ニュース、天気、スポーツなど、多彩なウェブサービスを提供しています。
検索エンジン機能は、Googleから主要な検索結果を取得しており、かつてのオープンディレクトリDMOZから一部のWebディレクトリリストも取り入れています。なお、検索結果にはリスティング広告が表示されない点も特徴のひとつです。現在、AOLの検索エンジンとしての世界シェアは限られていますが、米国内では特定層に安定したユーザーを持つ老舗ポータルサイトとして位置付けられています。
4.NAVER(韓国)
NAVER(ネイバー)は、韓国を代表する検索エンジンで、韓国国内における検索シェア第2位を誇ります。
検索機能にとどまらず、ニュース・ブログ・動画・ショッピングなどを一体化した韓国独自のポータルサイトとしても高い人気を持ち、「韓国のGoogle」と呼ばれることもあります。
1999年、Samsung出身のエンジニアたちによって設立されたNAVERは、初期にはYahoo!のOverture広告システムを活用していましたが、現在は独自開発のAI推薦モデルを基盤に、ユーザーの属性(年齢・性別・位置情報など)に応じたパーソナライズ検索結果を提供しています。
NAVERの最大の特徴は、Googleとは異なる独自の検索表示ロジックにあります。検索結果は、ブログ、動画、ニュース、ショッピング、Q&Aサービス「知識iN」など、カテゴリ別に分けて表示され、視認性が高く、韓国ユーザーにとって使いやすい設計がされています。さらに、検索結果にはUGC(ユーザー生成コンテンツ)が多く含まれる点も特長です。
5.Coc Coc(ベトナム)
CocCoc(コックコック)は、ベトナム初の検索エンジンとして2013年にリリースされた比較的新しいサービスです。
ベトナム国内に特化した展開によって人気を獲得し、現在ではGoogleに次ぐ国内検索シェア第2位の地位を確立。モバイルユーザー数は3,000万人以上にのぼります。
2022年7月には、ベトナム情報通信部より「国民デジタルプラットフォーム」として正式に選定され、国の後押しを受ける存在となりました。中国のBaiduやロシアのYandexのように、国家支援型のローカル検索プラットフォームは今後も成長が期待されており、CocCocもその動向に注目が集まっています。
6.Sogou(中国)
Sogou(捜狗)は、中国の検索エンジン市場で約4.2%のシェアを持ち、国内第4位の位置にあります。1日あたりのアクティブユーザー数(DAU)は約4億5,000万人とされており、依然として高い利用者数を誇ります。
2013年には中国IT大手のTencent(テンセント)によって買収され、現在はWeChat(微信)との連携により、WeChat上の情報を直接検索できるようになっています。さらに、Tencentが提供するQQブラウザーのデフォルト検索エンジンにも採用されており、同社のエコシステム内で強い存在感を放っています。
7.Daum(韓国)
Daum(ダウム)は、韓国を代表するインターネットポータルのひとつで、検索エンジンとしては国内シェア第3位(約10%弱)を占めています。
1997年に、韓国初の無料ウェブメールサービス「Hanmail(ハンメール)」を提供したことで注目を集め、2000年からは本格的に検索サービスを開始。以降、オンライン掲示板型の「Daumカフェ」やニュース配信など、多彩なコンテンツを展開しながらポータル型インターネット企業として成長してきました。
現在では、韓国で圧倒的シェアを持つメッセンジャーアプリ「カカオトーク」と連携しており、アプリ内で表示された言葉に関連する検索結果をスムーズに表示する機能などが実装されています。
検索エンジン単体のシェアは縮小傾向にありますが、カカオとの連携によるユーザー接点の強化やアプリ内検索との融合など、新たな戦略によって今後の成長が期待されるサービスです。
8.Seznam(チェコ)
Seznam(セズナム)はチェコ共和国に拠点を置く検索エンジン兼ポータルサイトで、チェコで初めての検索エンジンとして注目を集めました。
2012年~2014年頃まではシェアを30%前後を獲得していましたが、現在のシェアは12%にとどまっています。しかし、独自の検索エンジンがGoogleと対抗しているという意味では、中国のBaiduやロシアのYandexと同様に、世界で見ても非常に珍しい例の一つです。
特にデスクトップのシェア率を見てみると、時期によって変動はありますが14%前後を推移しており、チェコ国内では多くのユーザーに利用されていることがわかります。
9.Petal Search(中国)
Petal Search(ペタルサーチ)は、Huaweiが開発した検索エンジンで、モバイル向け多機能検索プラットフォームです。ニュース、動画、アプリ、ショッピングなど多様な情報にアクセスでき、AI・自然言語処理によりパーソナライズされた検索体験を提供。プライバシー保護にも注力しており、50言語以上・170以上の国と地域で利用されています。
米国でのHuaweiモバイルサービス禁止の制裁に対して、4年前からリリースされた新興の検索エンジンです。検索結果はMicrosoft Bing を利用しています。
10.Entireweb(スウェーデン)
Entireweb.comは、2000年にサービスを開始したスウェーデン・ハルムスタット発の検索エンジンです。
現在、スウェーデンではGoogleやBingが大きなシェアを占めていますが、Entirewebはスウェーデン語と英語の検索に対応しており一部のユーザー層に利用されています。
Googleの検索エンジンと同様に、検索キーワードに関連するウェブページ、画像、動画、ソーシャルメディアの情報などを検索結果に表示する設計となっており、軽量でシンプルなユーザー体験を提供しています。
近年では、ユーザーの個人情報を収集しない設計やクッキーレスでの検索提供といったプライバシー保護機能を前面に押し出しており、GoogleやBingなどの代替手段を求めるユーザー層に向けた選択肢として運営されています。
11.Rediff(インド)
Rediff(レディフ)は、1996年に設立されたインド・ムンバイ発の検索エンジン兼ポータルサイトです。現在はムンバイのほか、バンガロール、ニューデリー、ニューヨークにも拠点を持ち、着実に事業を拡大しています。
Rediffでは、検索エンジン機能に加えて、ニュース、ショッピング、メールサービス、エンターテインメントポータルなど、幅広いオンラインサービスを展開。インド国内に根ざした老舗メディアサイトとしても知られています。
インドの検索市場ではGoogleのシェアが9割を超えており、Rediffの検索シェアは限定的ですが、2023年1月のSimilarwebデータによると、月間トラフィックは約4,800万件(48M)にのぼり、根強いアクセスを維持しています。特に、インド国内からのアクセスが中心ではあるものの、アメリカやオーストラリアといった海外からの流入も確認されており、今後の展開に注目が集まっています。
12.Walla!(イスラエル)
1995年に設立されたWalla! Communications Ltd.(וואלה! תקשורת בע”מ)が提供する「Walla!(ワラ)」は、テルアビブに本社を置き、Googleが本格進出する以前からイスラエル国内で高い人気を誇っていた老舗検索エンジンです。ヘブライ語に最適化されたUIと検索対応で、国内ユーザーに根強い人気を獲得しています。
Sililarwebでのトラフィックを見てみると、2023年1月には110.2M(1億1000万)ほどのトラフィックを獲得しており、その人気ぶりが伺えます。そのうちの93%ほどがイスラエル内からのアクセスでした。
イスラエル内ではGoogleのシェアが約98%を占め、Walla!のシェアは数%といわれていますが、イスラエルはスタートアップ大国としても知られており、今後Walla!を始めとしたイスラエル発の検索エンジンの世界的知名度が向上することは十分考えられるでしょう。
13.Lycos(アメリカ)
Lycos(ライコス)は、1994年にアメリカ・カーネギーメロン大学の研究チームによって開発された、インターネット黎明期から存在する歴史ある検索エンジンです。
その後、複数の国や企業による買収を経ながら、独自の進化を遂げてきたというユニークな背景を持ちます。現在もアメリカを中心に世界各国で利用されていますが、一部の国や地域では検索結果が正常に表示されないケースも見られます。
Lycosは、高速で信頼性の高い検索性能に加え、ユーザーの行動に基づいたパーソナライズ検索や高度なフィルタリング機能を備えており、検索エンジン業界でも一定の評価を受けています。検索結果はYahoo!のデータを元に表示されており、日本語を含む13の言語に対応している点も特徴のひとつです。
14.WebCrawler(アメリカ)
Metacrawler(メタクローラー)は、アメリカに拠点を置く検索エンジンで、かつてはGoogle、Yahoo!、Bing、Ask.comなど複数の検索エンジンを横断的に検索する“メタ検索エンジン”として広く知られていました。
検索結果を一括で取得・表示できる手軽さから一時は多くの支持を集めていましたが、その後は存在感をやや失い、機能停止やリダイレクトの時期もありました。しかし、2017年に独自の検索エンジンとして再始動を果たし、従来の「複数検索統合型」から自社開発ベースの検索機能へと方向転換。現在は、かつてのブランドを活かしつつ、再び注目を集めています。
15.Search.ch(スイス)
Search.chは、スイス・チューリッヒに拠点を置く検索エンジン兼ポータルサイトです。検索結果は地域や都市ごとに絞って表示される仕組みで、ロマンシュ語を含むスイスの公用語に対応している点からも、スイス国内で一定のニーズを持つサービスとして利用されています。
全体のアクセスの90%以上をスイス国内からを占めていますが、近隣諸国のドイツ、オーストリア、チュニジアなどからも流入が見られます。
さいごに
Googleは依然として市場を独占しており、ウェブ検索の大部分を担っています。そのため、SEOや検索広告は2025年も有効なマーケティング施策であるでしょう。しかし、近年はプライバシー重視、セキュリティを強化した検索エンジンや、特定の言語や地域に特化した検索エンジンなど、独自の価値を提供する検索エンジンの利用が増加している傾向が伺えます。
広告出稿はもちろんのことSEO対策も検索エンジンによって手法は異なります。まずは自社のターゲット国・地域に最も最適な検索エンジンを把握することが大切です。


吉田 真帆 マーケティング部 プランナー
コンテンツ・SNS・メールマーケティングを統括。オーストラリアの永住権を取得したにも関わらず、思いもよらず日本に帰国。日本8年を経て、現在はシンガポールからフルリモート3年目。