企業が取るべきSNS炎上対策!
「事前準備・炎上中・鎮火後」の全工程
2023年現在、世界で47億人以上が利用するソーシャルメディアは、企業と顧客をつなぐ有効なマーケティングツールの1つとして多くの企業が活用に乗り出しています。特に海外市場を目指す企業にとって、海外における認知度を高め、ユーザーとの結びつきを強化するための重要な施策の1つとなっています。
しかし、その一方で常に「炎上」のリスクが存在しています。
まして、言語・文化・宗教・価値観の違う海外市場でのソーシャルメディア活用は、最新の注意が必要です。たとえ、最新の注意を払っていたとしても” トラブル・炎上 “が起こってしまうのが「海外」です。そこでは日本の常識は”全く” 通用しません。そのため、海外向けにSNSマーケティングを検討している企業は、SNSにおける「炎上」を想定た準備が必要です。
今回のこの記事では、企業が取るべきSNS炎上対策を「事前準備・炎上中・鎮火後」の3つフェーズに分けて、企業がとるべき海外向けSNSマーケティングにおける「適切な炎上対策」の全工程をご紹介します!
目次
ソーシャルメディアの「炎上」とは?
海外向けにソーシャルメディア施策を実行する場合、避けては通れないのが「炎上対策」です。特に海外市場の場合、言語・文化・宗教・価値観の違いなどによって、企業に非がなくとも炎上してしまい、企業に大きな影響を及ぼしてしまう場合もあります。ましてや、ジェンダーや環境問題など、現代社会を生きる私たちマーケターは様々な” 社会問題 ” なども考慮しなければならず、あらゆる方向からの視点と細心の注意が必要になってきます。
まずは、企業・チームとして「炎上とは何か?」を明確に” 定義 “しておきましょう。
総務省ではSNSの炎上を次のように定義しています。
「炎上とは、ウェブ上の特定の対象に対して批判が殺到し、収まりがつかなさそうな状態」「特定の話題に関する議論の盛り上がり方が尋常ではなく、多くのブログや掲示板などでバッシングが行われる状態」< 総務省: ネット上での炎上を巡る議論 >
なぜ、「炎上」が起きるのか?
SNS炎上が起きる原因として次の点が挙げられます。
- 社会的な規範意識やモラルの欠如
- フェイクニュース
- 製品やサービスの不具合
- 従業員による悪意のある投稿
- 世界的な潮流・出来事
社会的な規範意識やモラルの欠如
最も一般的な危機を誘発するタイプは従業員の社会規範の意識・モラルの欠如によって引き起こされるものです。この投稿は、第三者チェックが機能していない場合に起こる可能性が高くなります。
「この文章では投稿しない方がいいのでは?」「この日時は避けた方がいいのでは?」といった、視点を持っていないことが原因です。
企業がユーザーにとって、何が重要かをしっかりと理解したうえでアカウントを運用する必要があります。
フェイクニュース
ソーシャルメディア上ではフェイクニュースと呼ばれる悪質な情報が拡散する傾向がみられます。これは意図的に流される情報で、発信者の意図に反して大きな騒動を引き起こすことがあります。
ネット上にあふれるデマやフェイクは、「誰かを貶める」ことを目的にしたものがほとんどです。そしてそのターゲットは、多くの場合に特定の個人や企業です。ネット上で流れるデマやフェイクは「差別的」「偏見的」な内容を含んでいることが多く、時には過激な表現が用いられることもあります。また、悪意をもって流されたデマは炎上商法として利益を上げるために利用されることもあります。
製品やサービスの不具合
現在多くの企業でソーシャルメディアをカスタマーサービスの1つとして活用する企業が増えています。そのため、製品やサービスに不具合などが生じた場合、批判の矢面に立たされることになる可能性があります。
同じような経験をした人が、同じような投稿が拡散されていけばあっという間に批判的なコメントで埋め尽くされてしまうかもしれません。
従業員による悪意のある投稿
時には従業員の不祥事がきっかけで「あっという間に炎上した」という事例は世界中で多く見受けられます。不祥事と言っても公式アカウント上での投稿だけに限らず、不適切な資料のスクリーンショットを個人アカウントで公開して、身元がバレて企業アカウントが大炎上なんてことも起こる可能性があります。
世界的な潮流・出来事
冒頭でもお伝えしたように、海外向けソーシャルメディア施策においては、ジェンダーや環境問題、国際紛争など、様々な”社会課題”を考慮しなければなりません。
世界的な出来事に注意を払い、あらゆる視点と細心の注意が必要になってきます。
「炎上の危機管理」3つのフェーズ
ソーシャルメディアにおける「炎上危機」に対して、”確実”に対処するために、「炎上」を3つのフェーズに分けて考えてみましょう。
- 炎上に備える「事前準備」フェーズ
- 炎上に対応する「炎上中」フェーズ
- 迅速に通常に戻す「鎮火後」フェーズ
それぞれのフェーズによって注力するポイントが異なってきます。それぞれのフェーズの具体的な対策方法について解説します。
炎上に備える「事前準備」フェーズ
ソーシャルメディアの危機管理を行う場合、あらゆるシナリオを想定して準備する必要があります。もし炎上した場合でも、しっかりと準備しておくことで、被害を最小限に食い止めることができるでしょう。
リスクを明確にしておく
企業・商品・ブランドにどのようなリスクと脅威が存在するかを明確に特定しましょう。脅威といっても外部だけではありません。外部・内部の両方の視点から、顧客の苦情や世界的な有事、従業員の発言や不満、製品の問題点などあらゆる観点からリストを作成しましょう。
ソーシャルメディアポリシーを作成する
ブランドに最もダメージを与える炎上危機の多くは、「従業員の”誤爆”」いわゆる誤った投稿をしたことから発生します。これらの投稿を防ぐためには、ソーシャルメディア投稿に関する「ソーシャルメディアポリシー」を作成することで対応します。
一般的なソーシャルメディアポリシーは以下の項目を含めます。
- ソーシャルメディア「使用」のガイドライン
- 全てのプラットフォームで伝えるべき、ブランドの声
- 著作権に関する指針
- 守秘義務
- 危機時の対応プロセス
ソーシャルメディアを通じて、ユーザーから寄せられる問い合わせにどう対応するのか、誤った情報・漏洩などの疑わしいコンテンツにどのように対処するのかなどの基本的な項目はもちろんのこと、従業員がソーシャルメディアを通じて企業について言及する場合など細かい項目まで設定する場合もあります。
コミュニケーションガイドラインの作成
ソーシャルメディア上で「炎上」が起こってしまった場合のほとんど、数時間以内に制御不能に陥ります。(ゾッとしますね…)ソーシャルメディアでの危機では、1つ、2つの返信や投稿で解決することはほとんどありません。組織として対応できる包括的なガイドラインを持っていないと、担当者レベルで対応するとさらなる「炎上」を招きかねません。
炎上危機に社内でだれがどのように主権を持った対応するかのプロセスを明確にしておく必要があります。ステークホルダー・役員・従業員など社内のあらゆる役職の人たちの役割と責任を明確にして、適切なコミュニケーション方法、承認プロセスを確立し、そこに関わる全ての人に周知を行いましょう。
以下の項目は定めておきましょう。
- 全部門の役割と責任
- 重要な従業員の全連絡先
- 経営陣とのコミュニケーションルール
- ソーシャルメディア以外で、最新情報をユーザーに伝えるプロセス
- 危機管理チーム以外の社員が問い合わせ対応する場合のガイドライン
ソーシャルリスニングツールで潜在的な問題をモニタリングする
ソーシャルリスニングとは、商品やサービスなどに対してソーシャルメディアに投稿された消費者の意見やブランドに対する感情を分析することができます。費者が日常的に企業や製品に対して発信する「評価」や「批判」を追跡することで、顧客がブランドに対してどのように考えているのかを正確に把握し、炎上する前に見つけ出すことができます。
炎上に対応する「炎上中」フェーズ
先ほども述べたように、もし「炎上」してしまったら、多くの場合数時間で制御不能に陥ってしまいます。イーロン・マスクがたった1つの投稿でテスラ社の株価を8%下落させたように、あっという間に世界中に拡散され、今まで積み上げてきた顧客との信頼は崩れてしまいます。
Tesla Goes Bankrupt
Palo Alto, California, April 1, 2018 — Despite intense efforts to raise money, including a last-ditch mass sale of Easter Eggs, we are sad to report that Tesla has gone completely and totally bankrupt. So bankrupt, you can’t believe it.— Elon Musk (@elonmusk) April 1, 2018
<イーロン・マスクが投稿したこの1ツイートで、テスラの株価が8%も吹き飛びました。やはりイーロン・マスクはやることが大胆!>
そうならないためにも「適切な対応策」を、しっかりと理解しておきましょう。
1.状況を判断する
たとえ炎上した可能性があったとしても、フェイクニュースをはじめ信憑性が疑わしい場合や悪意を持って嘘の情報を拡散している場合なども存在します。炎上の内容を正しく整理・把握し、どの程度の炎上なのかを判断する必要があります。
もし、本当に炎上してしまっている可能性が高い場合は、投稿した記事の内容が事実かどうか、誰が投稿しているのか、企業にとって非があるのかどうかなどを早急に確認しましょう。
2.全ての自動投稿を一時停止する
危機的状況に直面した場合は、少なくとも現在セットされている自動投稿は停止しましょう。これは、今後予定されているキャンペーンも含めてです。炎上している一方で、新しいキャンペーンや投稿を継続してしまうと既に発生している「炎上」に、油を注ぐことになり兼ねません。
3.問題の「原因・発生場所」を特定する
ソーシャルメディアを見ている人たちは“見て見ぬふり”は、してくれません。大きな被害になるまえに、炎上原因を早急に特定しましょう。
SNSが炎上したときは「なぜ炎上したか」を特定をすることが大切です。SNS投稿内容が炎上する可能性として次の原因が考えられます。
- 不適切な内容が含まれていた
- 誤解を招く表現があった
- 誤字脱字や文章の間違いがあった
- 個人情報が漏れていた
- 誹謗中傷されていた
この他にも投稿者には全く非がないものや、情報を間違えて理解している場合があります。そのため、SNS炎上対策は、「問題が発生した原因」によって対応が変わってくるということを理解しておきましょう。
4.ガイドラインに沿って迅速に対応する
「事前に準備しておくべきこと」で述べたように、炎上の被害を最小限にするためには、事前にガイドラインを作成しておく必要があります。そして、そのガイドラインに沿って、迅速に対応していきましょう。
ソーシャルメディアを運用するうえで、否定的なコメントや投稿はつきものです。炎上時には「担当者レベルでは反応しない」に徹し、ガイドラインに沿った対応を行います。仮に返信を行う場合でも、より建設的なコミュニケーションに留め、「世間に対する企業の姿勢」を示すようにしましょう。
炎上モードでは、出来るだけ早く終息させたいと願うのは当然です。しかし、「謝罪」に関しては安易にするべきものではありません。中途半場な謝罪は新たな火種を生み、今まで築いたユーザーとの関係をいっきに崩壊させる可能性もあります。慌てて謝罪するのではなく、社内でしっかりと議論する体制が構築されている必要があります。
5.チームで共有・連携する
正確に情報を把握することが出来たら、社内へ情報を共有します。炎上を知った重要な取引先・顧客の対応が必要になるかもしれません。経営陣を含めたソーシャルチームメンバーが、社内の他のメンバーに迅速に情報共有を行いましょう。
- 何が起きたか
- 発生場所
- 企業としての方向性
- 対応方法
- 終息までのコミュニケーション方法など
炎上を沈静化させるために、ガイドラインに沿ってチーム一丸となって対応していきましょう。
迅速に通常に戻す「鎮火後」フェーズ
時間が経過すれば、どんな炎上もいずれ終息へ向かいます。しかし、ここで怠ってはいけないのが回復期の「評価」です。
1.炎上が与えた影響を評価する
ソーシャルリスニングツールを活用して、炎上が企業にどのような影響を与えたかを評価します。フォロワーやエンゲージメントの減少を計測し、ブランドに対する社会的感情の変化、具体的な苦情などを炎上する前・炎上中・炎上後と期間を区切り、具体的な数値を把握しましょう。
2.対応を振り返る
最後に自社の対応を振り返ることが最も大切な作業の1つです。
- 何が最も機能したか
- 最も困難だったところはどこか
- 改善が必要なプロセスはあるか
- 新しいガイドラインを作成する必要はあるか
- 今後の炎上危機にどう備えるか
ソーシャルメディアチームだけでなく経営陣や役員などを踏まえ、この炎上がブランドの評判とビジネス全体にどのような影響を与えたかを議論しましょう。
この経験を生かして、今後どのような対応を取るかなどを決めておく必要があります。
さいごに
ソーシャルメディアは企業とユーザーを強固に繋いでくれる素晴らしいツールの1つです。しかし、その一方で常に「リスク」が存在することを忘れてはいけません。優れたソーシャルメディア戦略を実行するためにも、危機に備え準備をしておくことは、海外SNS戦略では必須かつ重要な施策の1つと言えるではないでしょうか。
全ての危機は完全にコントロールできるものではありません。投稿を細心の注意を払ったとしても起こってしまう時もあります。そのためにも準備を怠ってはいけません。
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吉田 真帆 マーケティング部 プランナー
コンテンツ・SNS・メールマーケティングを統括しています。 オーストラリア永住権を取得したにも関わらず、思いもよらず日本に帰国。日本9年を経て、現在はシンガポールからフルリモート中。