香港・台湾の動画広告トレンドを分析!~市場規模・網紅(ワンホン)・有力動画メディア~
新聞広告、ラジオ広告、テレビ広告、そしてデジタル広告と、人の心を掴む広告媒体は時代とともに移り変わってきました。
現在においては、90年代のネット革命をきっかけに「バナー広告・メール広告・アフィリエイト広告、そして更に進化したリスティング広告」をはじめとするデジタル広告が利用されるようになりました。そうした数ある広告媒体の中で、近年もっとも高い成長率を見せているのが「デジタル動画広告」です。
今回は、これからますます成長していくであろう「台湾と香港の動画広告市場とその特徴」をご紹介します。
目次
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- 1.世界でなぜ動画広告が伸びているの?
- 2.台湾のインターネットユーザーの傾向
- 3.台湾の動画広告市場解説
- 4.台湾で有力な動画広告プラットフォーム
- 5.香港のインターネットユーザーの傾向
- 6.香港の動画広告市場解説
- 7.香港で有力な動画広告プラットフォーム
- 8.さいごに
世界でなぜ動画広告が伸びているの?
世界のデジタル動画広告市場は、2020年から2027年にかけて41.1%の成長率(CAGR)で成長すると予測されており、技術の進歩と消費者行動の変化により(とりわけモバイルの)デジタル動画市場は世界的に大きな成長のときを迎えています。
<総務省 : 情報通信白書「5G時代を支えるデータ流通とセキュリティ」より>では何故、デジタル動画広告は急速的に成長しているのでしょうか?
それは単にデジタル動画広告の特色である「印象に残りやすい・情報量が多い・拡散性が高い」といったメリットの他に、高度なモバイルデバイスの技術進歩と「5G技術」の進化が大きく影響しています。近年SNSを中心に流行している垂直動画や360°動画などを可能にした技術開発は、デジタル動画広告の成長を推し進める大きな原動力の1つとなりました。
「ライブ配信」や「360°・パノラマ・バーチャルリアリティ動画」などのフォーマットは、ユーザーの没入感を広告分野にも取り入れることで、動画広告をますます魅力的なものにすると言われています。また、最新のテクノロジーであるブロックチェーン技術の動画プラットフォーム活用や、よりパーソナライズされた動画広告を効率よく配信することが可能になるなど、より複雑なデジタル動画広告戦略が可能となると見込まれています。
台湾のインターネットユーザーの傾向
Hootsuiteの最新のレポートでは、2022年、台湾のインターネットユーザーは2,172万人に達しました。台湾の人口が2,378万人なので、人口の約91%がインターネットを利用していることになります。
インターネットユーザーの増加推移は、以下の通りです。
- 2020年:2,100万人
- 2021年:2,145万人
- 2022年1月:2,172万人
また、台湾における1日のインターネット使用時間は「8時間7分」です。
世界平均の6時間58分と比較すると1時間以上長く利用しており、台湾人にとってインターネットはなくてはならない生活インフラの一部であることが伺えます。<We are social _ Digital 2022 Taiwan>
そして、インターネットを利用している理由の(なんと!)68.2%が「動画の視聴・TV・映画」と、映像コンテンツの消費に充てられています。YouTube・Netflix・iQiyiなどのストリーミングプラットフォームで過ごすの1日の平均時間は1時間13分です。
以下は、2022年の台湾でのソーシャルメディアユーザー数は以下の通りです。(Datareportal)
- Facebook ‐ 1,635万人
- YouTube ‐ 2,010万人
- Instagram ‐ 1,055万人
- TikTok ‐ 416万人
- LinkedIn ‐ 260万人
台湾の動画広告市場解説2019年、台湾行政院は「台湾5G行動計画」を発表し、2022年までの4年間で204億6600万NT$(約780億円)を投じ、5Gによる未来社会の構築に注力する計画を発表しました。その他「産業創新条例」を公布したうえでAIや5G投資に対しての優遇税制を行うなど、5G時代到来に向けて「デジタル社会構築」の実現に向けた積極的な規制緩和・法整備を進めています。
2019年、台湾のデジタル広告の総額は458.41億元(NT )、日本円にして約 1,661億円となり、2018年と比較すると17.6%の成長率を記録しました。最も高かった媒体の種類は「ディスプレイ広告」、2番目は「検索広告」、そして3番目の「動画広告」は、検索広告とほぼ同割合の24.24%と全体の1/4を占めています。
< 出典:http://www.dma.org.tw/ >また、Statistaの調査でもわかるように、台湾の動画広告市場は2012年以降年々拡大しており、今後も環境整備とともに成長していく市場であると予想されます。
<出典:Statista「Online video advertising market size in Taiwan from 2012 to 2021 (in million U.S. dollars) > 台湾で有力な動画広告プラットフォーム台湾では、「YouTube」以外でよく利用されている動画広告プラットフォームは「Facebook」と「Instagram」です。
このレポートによると、2022年1月における台湾でのFacebook使用率は90.8%と高い割合でした。またInstagramは、若者を中心に利用されており使用率は70.6%と高い結果を示しています。2021年が59.5%であったことを考慮すると非常に高い成長を見せています。
<出典:HootSuite「Digital 2022 Taiwan」>
またこうしたデジタル動画市場の拡大に伴い、商品の宣伝手法も近年変化してきています。一昔前まではブログコンテンツで文字と写真を使って商品を宣伝する手法が主流でした。しかし、現在では「網紅(ワンホン)」を活用しプロモーションを行うことが増えてきています。
網紅(ワンホン)とは、ソーシャルメディア上において強い影響力をもつインフルエンサーのことで、特に動画共有サービスを通じて活動する人を指します。
網紅のメリットはネット上で文字と写真だけではなく、ライブ動画を配信しながら直接視聴者(潜在層ユーザー)にアピールすることができるので、ユーザーにより近く、商品やサービスにより親近感を与えることができるのです。台湾マーケティングにおける商品プロモーションには最適な手法の1つです。
香港のインターネットユーザーの傾向Hootsuiteの最新のレポートでは、2022年、香港のインターネットユーザー数は705万人に達しました。香港の人口が758万人であるため、香港の人口の約93%がインターネットを利用していることになります。香港のインターネットユーザーは、2021年から2022年の1年間に1.4%増加をしています。
香港における1日のインターネット使用時間は「6時間46分」です。台湾の8時間7分と比較すると1時間以上も短いですが、世界平均とほぼ同じ時間でした。そして、インターネットを利用している理由の56.8%が「動画の視聴・TV・映画」などの映像コンテンツの消費に充てられています。
また、ソーシャルメディアの活用も活発で、インターネットユーザー数が705万人に対して668万人、人口に対して88%以上の人が難からのソーシャルメディアを利用しています。
< Hootsuite : 「Digital Honk Kong 2022」>また、2022年の香港のソーシャルメディアユーザー数は以下の通りです。(Datareportal)
- YouTube ‐ 668万人
- Facebook ‐ 445万人
- Instagram ‐ 360万人
- LinkedIn ‐ 240万人
香港の動画広告市場解説国際金融市場において、重要な位置を占めている香港は、現在78%と高いスマホ普及率を誇っています。この数字はデジタル先進国である韓国やシンガポールと同等の水準です。
香港は、デジタル動画の視聴率が世界で最も高い国の一つであり、2012年以降動画広告市場は年々上昇しています。Chinawayのレポートによると、ウェブ人口に対して90.3%がオンラインで動画を視聴しており、調査したどの国よりも多い水準となっています。
< 出典:https://chinawaylink.com/zh/otv/ >また、2019年のNewimediaの調査によると、香港のデジタル広告出向金額のうち割合が最も大きかったのは「ディスプレイ広告」、2番目は「動画広告」で$167M(USD)でした。台湾と同様、デジタル動画広告が24.8%と高い割合を占めており、こちらも同様に全体の1/4を占めています。
香港で有力な動画広告プラットフォーム香港で主に利用されている動画プラットフォームは「YouTube・Facebook・Instagram・Wechat」です。
その他のプラットフォームとしては、ショート動画でお馴染みの「TikTok」は、香港でも急激にユーザーを獲得しており、多くの若者が利用しています。
< Hootsuite : 「Digital Honk Kong 2022」>
中国版のTikTokは「抖音(Douyin)」で、ユーザー数は6億人以上です。「抖音(Douyin)」は、「アイディア次第で簡単に有名になれる」、「フォロワーを増やしやすい」という意味が込められており、デジタルネイティブである若者世代から強力な支持を得ています。その他にもNetflix、Ketchup TVやMyTV Superなど、香港では多数のオンデマンドTVが多く利用されているのが特徴です。
さいごに
世界でも有数の繁体字圏「台湾・香港」のデジタル動画広告の市場・トレンド、3つのポイントを押さえておきましょう。
「テキスト・写真ベースのBlogコンテンツ」から「動画を使用したVlog(ビデオブログ)」へのトレンド移行 台湾では、網紅(ワンホン)を活用した動画広告が有効 香港の動画広告市場世界トップクラスの規模台湾・香港ともにインターネット普及率・動画視聴率が高く、動画広告市場も拡大しています。日本から台湾・香港に向けたデジタルマーケティング施策として「動画広告」を検討することは、成功への1歩となるでしょう。特に動画広告のメリットの1つである「文字や写真と比べるとより多くの情報をユーザーに伝えることができること」は大いに活用していきましょう。
なお、そうした日本から繁体字圏(香港・台湾)マーケットに向けたデジタルマーケティング、「内製だと難しい…」という方は是非とも私たちに支援させてください!
吉田 真帆 マーケティング部 プランナー
コンテンツ・SNS・メールマーケティングを統括しています。 オーストラリア永住権を取得したにも関わらず、思いもよらず日本に帰国。日本9年を経て、現在はシンガポールからフルリモート中。