「Cookieレスの世界」
~今マーケターが備えるべき、5つのポイント~
世界でデジタル化が加速するなか、現在多くのブラウザが個人情報保護の観点からサードパーティのCookieを削除しはじめています。
Cookieの規制は、2018年欧州で発効されたGDPR(General Date Protection Regulation)を発端に、全世界でその現実味を帯びてきました。2020年1月GoogleがChromeにおいて2022年をめどにトラッキングに用いられるサードパーティCookieのサポートを「廃止する方針」を発表したことや、日本国内でも2020年3月「改正個人情報保護法」が閣議決定され、2022年4月には全面施行予定に向けて進められるなど、データ利用条件を厳格化する動きが急速に広まっています。
今後、世界中で個人情報保護などの規制が進むにつれ、私たちマーケターが考慮しなければならないこととはどのようなものなのでしょうか?
Cookieとは?
「クッキー/Cookie」とは、ウェブブラウザに蓄積されている「ユーザーの行動情報」のことを言います。
ユーザーはブラウザを利用して情報を検索しますが、どのサイトにアクセスしたかなど、訪問履歴や閲覧履歴を一時的に保存するのがクッキーの役割です。蓄積される情報は、訪問したサイトのホームページをはじめ、ユーザーのログイン情報(ログインIDやパスワード)、メールアドレスなど、個人が特定できるものも含まれます。
Cookieはユーザーの「興味」や「嗜好」といったデータを提供するため、広告運用者などマーケティング施策においては「貴重な情報源」になるのです。ユーザーが求めるサービスの提供や製品開発につなげることやマッチする広告を掲載するなど、企業にとってCookieは多くのメリットをもたらします。
ユーザー側も自分が求めている情報やサービスを知ることができるだけでなく、毎回ログインする手間が省けるなど、利便性の高さにおいてメリットがあります。
マーケティングにおけるCookieの重要性とは?
ウェブマーケティングを実施する目的は、ウェブサイトにアクセスするユーザーが欲している情報やサービス、商品などを相違なく提供することにあります。
実際にサイト分析などを進めていくとわかりますが、訪問するユーザーの行動は、興味のない情報や広告は見向きもせず、一瞬のうちに離脱することがわかります。そのためユーザーの行動を正確に把握し、どんな商品やサービスに興味関心を持っているかを正確に分析すること、つまり「ユーザーの行動を把握すること」は、どのデジタルマーケティング施策であっても成功のために必要不可欠な要素の1つになります。
また、広告を配信する際も、ターゲットとなるユーザーの興味関心にできる限りマッチする広告やコンテンツを表示させ、ユーザーの注意を惹きつける必要があります。コンバージョンに至らなかったユーザーは、単に興味がないというだけでなく「興味はあるけれど今は必要ない」、「ほしいけれど、今は買わない」など、さまざまな理由があります。
こうした理由についても分析し、次に繋げるのもウェブマーケティングでは重要なポイントになります。そして、この細かな分析を可能にしてくれるのが、サードパーティCookieなのです。
しかし、個人情報保護の観点から世界中でCookieの規制が叫ばれはじめ、今後こうしたユーザーのデータを活用することが難しくなってくると言われています。今後Cookieが利用できなくなるということは、ウェブマーケティング手法の根本から変更せざるを得ない状況に追い込まれることが予想できます。
国内・海外における規制の現状
現在、Cookieはデジタルマーケティングを実施するうえで、ユーザーの行動を把握するうえで非常に便利な一方で、「個人情報を脅かす懸念材料」として、世界中で議論の対象となっています。
国内
日本国内においても、就職情報サイト「リクナビ」を運営しているリクルートキャリアが、サイトを訪問したユーザーのCookieをもとに、内定辞退率なるものを算出し、それを採用企業に提供していたと話題になりました。
ここで大きな問題となった点は、ユーザーに許可を得ずに勝手に、個人情報を特定できるCookieの機能を利用したことでした。内定辞退率は、企業にとって非常に参考になる情報の1つかもしれませんが、個人情報を利用されたユーザーにとって不利益になる可能性があるのです。リクルートキャリアの問題発生後、個人情報保護委員会は、「Cookieの利用でデータの提供先企業が個人情報を扱う場合、新たな規律を検討する」ことを宣言しました。
海外
一方、海外においても個人情報の保護を目的に、Cookieの利用を規制する動きは非常に活発に議論されいます。
例えば、Appleでは2020年3月以降に発売された製品に、Cookieのブロック機能を備えた「Safari 13.1」を実装させています。Googleは、2020年1月14日付のChromium Blogの「Improving privacy and security on the web」にて、Cookieデータを第三者に提供することを廃止する意向を表明しました。代わりに「Privacy Sandbox」と呼ばれる技術への取り組みを発表しています。
EUは、日本でリクルートキャリアの問題が持ち上がる以前から、個人情報の保護に積極的に取り組んでいます。EUは、1995年にEUデータ保護指令を発動し、個人情報の取り扱いを規制していました。それをさらに厳格化したのが、2018年5月25日に施行されたGDPR「General Data Protection Regulation」(データ保護規制)です。
GDPRは、EU国内で適用されていますが、法律に違反した外部企業(EU向けにサービスを提供している企業やEU圏内に支店のある企業など)も、処罰の対象になります。GDPRが定めている、EU居住者のデータ取り扱いに違反すると、莫大な違約金が発生しますので、海外で事業を展開している企業は特に注意が必要です。
また、ブラジルにおいては、ブラジル個人情報保護法Lei Geral de Proteção de Dados(以下LGPD)の施行が予定されており、2020年1月からカリフォルニア州では、カリフォルニア州消費者プライバシー法(CCPA)が適用開始しています。国境を越えた個人情報の取り扱いについて世界各国が対応する中、GDPRとの比較対象となる事が多く、今後の個人情報の取扱いの指標の一つにもなるでしょう。
詳しくは下記のブログも参考にしてみてください。
グローバルマーケター必見!
「GDPRの気をつけるべきポイント」
Cookieレスの世界に備える、5つのポイント
では将来的に迎えるであろう「Cookieレスの世界」に対してどのような対策を立てれば良いのでしょうか。
IPアドレスの追跡
IP(インターネットプロトコル)アドレスも、ユーザーを特定する一つの方法で、Cookieが規制されたあとに、利用度が高まる可能性があるとして注目されています。IPアドレスの追跡は、IPを検出し、それをIPレジストリデータベースと照合することで、ユーザーを特定する試みです。まだまだ不完全な部分はありますが、IPアドレスの行動を追跡することでその背後にいるユーザーを特定します。
IPアドレスからは、ユーザーの訪問履歴やダウンロード、口コミ投稿など、さまざまなアクティビティの把握が可能です。企業は、IPアドレスを追跡したり、データをもとに個人を特定したりができるようになります。必要であればユーザーの再ターゲティングも可能です。
ビジネス連絡先データとIPアドレスのデータを統合する
IPアドレスとビジネス連絡先データを併用すると、IPアドレス追跡の弱点をカバーでき、個人の特定がより明確になります。
たとえばビジネス連絡先データを役職または機能ごとに分けて階層化しておきます。そして会社のIPアドレス情報と照らし合わせると、ユーザーが特定できるだけでなく、その会社で意思決定をおこなっているのは誰か、というところまで把握できるのです。必要に応じてデータとIPアドレス情報を組み合わせれば、タイムリーで情報を得ながら、個別の連絡先までも正確に特定できるようにもなるでしょう。
Webマーケティングは、アカウントベース・マーケティング(ABM)へ移行しつつあります。
膨大な情報からマーケティングの目的に合わせて焦点を絞り、必要な情報だけを抜き出すことがABMには求められますが、その作業を効率化させるのがIPアドレス情報とビジネス連絡先データの組み合わせになります。
1st Party Cookieの利用
1st Party Cookieの利用も再注目を浴びています。ファーストパーティクッキーはユーザーが訪問しているWEBサイトのドメインから直接発行されるCookieで、サードパーティクッキーはそれ以外のドメインから発行されたクッキーを指します。
Cookieを使ったマーケティングソリューションの代表格としてDMP/CDPというソリューション群があります。前述している個人情報保護法との兼ね合いもあり、プロダクトの形も時代に合わせて変わってきています。これはマーケティング手法にも同じ事が言え、Cookieベースで実践してきたマーケティングはIDベースのマーケティングに移行すると言われてきています。技術的にもCookieの代替として前述のPrivacy SandboxやFinger Printと呼ばれる技術も進化をしています。
コンテクスト・マーケティング
多くのマーケティング担当者は、ユーザーのアクセス状況や検索時に利用するキーワードなど、特定の場所をベースにターゲティングする傾向があります。コンテクスト・マーケティングと呼ばれる手法ですが、設定されたパラメータに基づいてコンテンツを表示しているときに広告やその他のプロモーションメッセージが表示されるため、「適切な」タイミングでターゲットオーディエンスにリーチすることが可能となります。コンテクストマーケティングは、一定の効果があるとされていますが、完璧というわけではありません。情報が不足している場合、予測が難しくなってしまいます。また、単なる調査で訪問したユーザーや間違ってサイトにアクセスしてしまったユーザーも含まれるので、実用的ではない面も持ち合わせています。
Cookieがすべてではない
Cookieはクリックに基づいてターゲットのパフォーマンスを追跡・測定する方法ですが、完璧なデータを提供してくれるわけではありません。確かにユーザーの行動を追跡してくれるものですが、ユーザーのクリック数に頼っているため、ユーザーの行動をすべて解き明かすというものではありません。
Cookieにより、サイトを訪れたユーザーを知ることができますが、ユーザーはなぜサイトを訪問したのか、訪問することで何を期待しているかという、潜在意識までは伝えてくれません。ざっくりとした情報からマッチングする広告を表示するため、必ずしもその個人が求めている情報を伝える広告とは限らないということも、忘れないようにしましょう。
Cookieの利用が厳格化されることで既存のマーケティング手法の一部は確かに通用しなくなります。ただ、それに変わる手法や技術は日々進化しているのもまた事実です。新しい情報を常にピックアップしながら、自社に合った手法や技術を探し、より精度の高いマーケティングを実践する事も可能です。
まとめ
Cookieの利用制限が厳格化され、ウェブマーケティングの手法も変化が求められています。利便性の高いCookieですが、それがすべてではありません。ユーザーが求めている商品やサービスを依拠するという、マーケティング本来の目的を見失わずに、新しいリソースや手法を取り入れながら、マーケティングの精度を上げていく姿勢が、マーケティング担当者には求められます。
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吉田 真帆 マーケティング部 プランナー
コンテンツ・SNS・メールマーケティングを統括しています。 オーストラリア永住権を取得したにも関わらず、思いもよらず日本に帰国。日本9年を経て、現在はシンガポールからフルリモート中。